登録喀痰吸引等事業者とは、介護福祉士が業務として喀痰吸引等を行う事業所として、都道府県に登録した事業者のことです。介護福祉士以外の介護職員が、研修を修了して行う場合の事業所は「登録特定行為事業者」と呼ばれます。どちらも、職員個人の資格だけでは足りません。事業所の登録がそろって初めて、仕事として喀痰吸引を任せられます。
この記事は、事業所の管理者や施設長、研修担当者に向けて、事業所の登録に絞って整理しました。職員個人の研修や認定証については、別の記事で扱っています。制度は改正されることがあります。申請の様式や要件の最新は、厚生労働省と都道府県の公式資料で確認してください。
登録喀痰吸引等事業者と登録特定行為事業者の違い
名前が2つあるのは、喀痰吸引を行う職員の立場が2通りあるからです。違いは、事業所にいる職員が介護福祉士か、研修を修了した介護職員等か、という点です。
| 事業所の区分 | 喀痰吸引等を行う職員 | 職員側で必要なもの |
|---|---|---|
| 登録喀痰吸引等事業者 | 介護福祉士 | 実地研修の修了と、社会福祉振興・試験センターへの登録(介護福祉士登録証への行為の付記) |
| 登録特定行為事業者 | 介護福祉士以外の介護職員等(認定特定行為業務従事者) | 喀痰吸引等研修の修了と、都道府県が交付する認定証 |
現場で多いのは、後者の登録特定行為事業者です。介護福祉士以外の職員が、第1号・第2号・第3号のいずれかの研修を修了し、認定証を受けて行うケースです。介護福祉士と研修修了の職員が両方いる事業所は、両方の区分が関わります。その場合の申請の出し方は、都道府県に確認してください。
事業所の登録が必要な理由
喀痰吸引や経管栄養は、本来は医行為です。介護職員が行えるのは、法律で定められた条件を満たした場合に限られます。その条件は、職員と事業所の両方にあります。
- 職員側:研修を修了し、都道府県から認定証の交付を受けていること
- 事業所側:都道府県に登録した事業者であること(すでに登録済みなら、従事者名簿の変更)
大阪府の案内では、認定証の交付日から行為を始められるとされています。そして事業所は、登録を受けるか、すでに登録している場合は従事者名簿を変更する必要があります。職員が認定証を持っていても、事業所の登録や名簿の手続きがなければ、業務として行うことはできません。他府県の事業所は、それぞれの都道府県の案内を確認してください。
職員を先に研修へ出し、認定証が届いてから事業所の手続きを調べ始めると、そこから開始が遅れます。事業所の準備は、職員の研修と並行して進めるのが現実的です。
登録喀痰吸引等事業者の要件(登録の基準)
登録の基準は、国の法令と、都道府県の申請手引きに定められています。ここでは全体像として、事業所に求められる中身を挙げます。細かな条文や様式は必ず公式資料で確認してください。根拠になる法律は、社会福祉士及び介護福祉士法です。
1. 医療関係者との連携
喀痰吸引等は、医師の指示のもとで行います。そのため、医師や看護職員との連携体制が要件の中心です。具体的には、次のような仕組みを事業所に整えます。
- 対象者ごとに、医師の文書による指示を受ける
- 対象者の心身の状況を、医師や看護職員と共有する
- 実施計画書を作成する
- 実施状況を報告書にまとめ、医師に提出する
事業所の種類によって、看護職員が内部にいるか外部の連携先かが変わります。
2. 安全に実施するための体制
- 安全委員会の設置など、ヒヤリハットや事故を検討する仕組み
- 急変や事故が起きたときの、緊急時の対応手順
- 職員への研修や、技術を保つための体制
- 対象者や家族へ説明し、書面で同意を得る手順
3. 設備・衛生・個人情報
- 必要な器具・備品をそろえること
- 感染予防など、衛生的な管理
- 対象者の情報についての秘密保持
この3つの柱のうち、実務で時間がかかるのは1の医療関係者との連携です。主治医や訪問看護ステーションなどとの取り決めは、相手のある話です。書類の前に、連携先との話し合いを始めてください。
登録までの流れ
事業所が登録特定行為事業者になるまでの標準的な流れを、番号で示します。細かい順序や提出時期は都道府県で違います。
- 対象者と行為を整理する。喀痰吸引等を必要とする利用者が誰か、どの行為(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう・腸ろう、経鼻経管栄養)を行うかを洗い出します。
- 職員を研修に出す。対象者の状況に合わせて、第1号・第2号・第3号のどれが必要かを決め、職員を受講させます。
- 医療関係者との連携を取り決める。医師の指示書、報告の方法、緊急時の連絡先を決めます。
- 体制と書類を整える。安全委員会、緊急時対応の手順書、同意書、計画書・報告書の様式などを作ります。
- 都道府県に登録を申請する。大阪府の場合、申請先は福祉部 高齢介護室 介護事業者課 施設指導グループで、郵送か持参(持参は事前に日程調整)で出します。不特定多数の者を対象にする場合も、特定の者だけを対象にする場合も、窓口は同じです。
- 職員の認定証の交付を受ける。修了した職員が、都道府県へ認定証の交付を申請します。
- 従事者名簿に反映し、実施を始める。すでに登録済みの事業所は、従事者名簿の変更で足ります。
大阪府の場合、申請手数料は不特定多数の者を対象にする事業者が2,300円、特定の者だけを対象にする事業者は不要です。登録通知書は、申請日から約2週間後に郵送されます。開始希望日から逆算して、余裕のある日程を組んでください。
職員の研修から事業所の相談まで、まず全体像を聞きたい方は、たん吸引研修(第3号研修)の講座ページから確認できます。
登録後に事業所が続けること
登録して終わりではありません。登録事業者には、実施の記録や体制の維持が求められます。
- 対象者ごとの医師の指示と同意を、更新しながら管理する。
- 実施計画書と報告書を、実際の運用に合わせて見直す。
- 職員が増えたら、研修と認定証を整え、従事者名簿を変更する。
- 登録内容に変更があれば、変更の届出が必要(大阪府では、従事者名簿に載せた職員の変更も届出の対象)。
ぼくの見解として、いちばん崩れやすいのは職員の入れ替わりのときです。認定を受けた職員が退職し、残った人数では夜勤や訪問の枠を回せない、という状況が起こります。登録を考える段階で、研修を受ける職員を1人に絞らず、シフトが回る人数で計画してください。
職員の研修は、事業所の状況から逆算して選ぶ
研修の種類は、利用者の状況で決まります。不特定多数の利用者に行う場合は第1号・第2号、特定の利用者1人に行う場合は第3号が基本の考え方です。ただし、行える行為の範囲は研修の種類で変わります。細かな範囲は、受講前に研修機関と都道府県の資料で確認してください。
事業所の登録をしたあとに「必要な研修が違った」と気づくと、登録内容の変更や職員の再受講が発生します。先に利用者と行為を整理してから、研修の種類を決めるのが、手戻りの少ない順序です。
個人の研修については、喀痰吸引等研修 第3号とは?、喀痰吸引の実地研修とは?、たん吸引研修はオンライン+教室1日でくわしく説明しています。
ベストウェイケアアカデミーに相談できること
ベストウェイケアアカデミーは、大阪府登録研修機関(登録番号2724002号)です。平成24年から喀痰吸引等研修を実施してきました。個人の受講だけでなく、事業所単位の相談も受け付けています。
相談できるのは、主に次の内容です。ただし、登録の審査や許可を行うのは都道府県です。研修機関が登録の可否を決めることはありません。
- 利用者の状況に合う研修の種類の整理
- 職員を何人、どの時期に受講させるかの計画
- 研修から認定証までの流れの確認
第3号研修については、遠方の実地研修にも対応できます。現場の看護師が指導・評価を行い、ベストウェイとの書類はデータでやりとりします。他府県での認定申請は全国共通の制度なので問題ないと考えています。ただ、念のため受講前に、その都道府県の担当課へ問い合わせてください。
よくある質問
登録は事業所ごとに必要ですか。
登録は事業所単位で行うのが基本です。法人に複数の事業所がある場合は、喀痰吸引等を行う事業所ごとに手続きが必要になるのが一般的です。国の制度の説明でも、「事業所ごとに都道府県知事に登録」とされています。
職員が認定証を受ければ、事業所の登録は後でもよいですか。
後回しにはできません。大阪府の案内では、認定証の交付日から行為を始められるとされていますが、その前提として事業所の登録、またはすでに登録している場合の従事者名簿の変更が必要です。登録も名簿の変更もないまま、介護職員が業務として喀痰吸引を行うことはできません。
登録にかかる費用はいくらですか。
大阪府の場合、登録申請の手数料は、不特定多数の者を対象にする事業者が2,300円、特定の者だけを対象にする事業者は不要です。研修の受講料は、研修機関ごとに異なります。
すでに登録している事業所で、職員を増やすときはどうしますか。
新しい職員に研修を受けさせ、認定証の交付を受けたうえで、従事者名簿を変更します。事業所の登録そのものを、最初から取り直す必要は通常ありません。ただし、行う行為や対象者の範囲を広げる場合は、登録内容の変更が必要になることがあります。都道府県に確認してください。
申込・相談の案内
喀痰吸引等研修の日程や申込、事業所単位の相談は、たん吸引研修(第3号研修)の講座ページから確認してください。日程と受講料は変わることがあるため、最新はサイトで確認をお願いします。
まとめ
- 登録喀痰吸引等事業者は、介護福祉士が喀痰吸引等を行う事業所の登録です。介護福祉士以外の職員が行う事業所は、登録特定行為事業者です。
- 職員の認定証と、事業所の登録(または従事者名簿の変更)は、両方がそろって初めて有効です。
- 登録の要件は、医療関係者との連携、安全に実施するための体制、設備・衛生・秘密保持の3本柱です。
- 職員の研修と、事業所の体制づくりは並行して進めます。連携先の医師・看護職員との取り決めは、早めに始めてください。
- 申請先・手数料・処理期間・要件の細部は、厚生労働省と都道府県の最新資料で確認してください。
事業所の登録と職員の研修は、順序を間違えなければ難しい手続きではありません。まずは、利用者と行う行為の整理から始めてください。

